Roo's Labo

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海老原嗣生『人事の組み立て〜脱日本型雇用のトリセツ〜』

海老原嗣生さんの本は『人事の成り立ち』につぎ二冊目。前著同様、素晴らしい本だった。本質的な点が、わかりやすい言葉と明確な論理で説明されているからで、この本を一冊読めば、昨今盛り上がっている「ジョブ型」の正確な意義と、それを自社に適用する場合に何を考えなければいけないかが、(諸外国との労働慣行の違いや女性・高齢者・非正規雇用をどう考えるべきかという広いパースペクティブも含めて)腹落ちして理解できる。

特に白眉と考えるのは、ジョブ型とメンバーシップ型雇用の違いについて、欠員を補充する観点から説明したくだりだ。ジョブ型(実態は、あるポストに人をいれこむポスト型)であれば、社内の他の人間は、一義的には契約上欠員ポストの職責をはたすことはできないので、他社(外部労働市場)から横スライドで獲得することになる。一方、メンバーシップ型であれば、社内の他の地域で同じような仕事をしている人間を横に動かしたり、下から人を昇格させて欠員を埋めることができるのだが、そうして生まれたつぎの欠員も、最終的には新卒を採用することで埋まってしまう。このような融通無礙で便利な仕組みは当面なくならないだろうと思えるし、新卒採用・解雇の困難さ・長時間労働の慢性化といった様々なトピックが、背後で論理的につながっている(ゆえに、ある一部分を変えただけでは雇用システムは変わらない)点が極めて明快に解き明かされている。

唯一惜しむらくは、Kindleのレイアウトが独特?でハイライトの線を引いたりブックマークできない点。この点は本書の実用性を損なうのでなんとかしてほしかった。