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【本】江川昌志 アクセンチュア流生産性を高める「働き方改革 」

ITコンサルティング企業であるアクセンチュアが、より短い時間で高品質な価値を生み出すための自社の働き方改革(プロジェクト・プライド)について記した本。

社長の江川さんが相当な想いと覚悟を持って始めたことが伝わる一方、失礼ながら施策の内容や進め方について目新しさ,迫力はなく、これらの取り組みでどの程度会社が変わり社員がいきいきとしだしたのか、あまり腑に落ちない部分があった。

一方で、本書巻末の後書き(戦略コンサルティング本部本部長の牧丘宏氏と、シニアマネジャーの植野蘭子氏によるもの)は、今後企業と働き手の関係がどのように変化するかという見通しと、その際に求められる人事管理上の諸論点について、わかりやすくまとまった論考を提供している。この内容が本書全体を引き締めているし、ここを読めただけでも本書を手に取った甲斐があった。

以下は私的なメモも兼ねて、上記論考についてまとめる。

サイモン・シネックのゴールデンサークル理論

リーダーシップについて数々の著書を持つシネックによれば、人の思考にはWhy→How→whatという3うのフレーム階層があり、部下や同僚、あるいは顧客など周りの人を動かしたいならば、具体的な施策(What)を考える前に、まずは何のために(Why)を考えて、そのWhyを世に問うにあたってのこだわりポイント、すなわち、「譲れぬ一線」を明確にすべきというものです。

自分の場合は、すぐにWhat ばかり考え視野狭窄になるのでこの点は肝に銘じたい。

 

持つべき視座

まず、従業員と企業の関係性が今後は根本的に変わるという認識を持つ必要があります。 すなわち、これまでの「企業は自社のミッションを達成するために必要な人材を雇用する」というモデルは、「企業は働き手が自分自身のキャリアビジョンを達成しうる場か否かという観点で選別される」というモデルへと抜本的な変革を余儀なくされるということです。

こうした姿をアクセンチュアでは、「リキッドワークフォース(働き手の流動化)」と呼んでいます。

企業が主語の時代から、働き手が主語の時代へ変化する。これには、少子高齢化労働人口の減少で働き手の相対的な価値が上がることも関係している。

 

働き手への提供価値

一方、「働き手への提供価値」についてはどうでしょうか。前述したとおり、今後は企業が働き手から「選択される」存在となる以上、これまでのやり方を抜本的に改革しなければなりません(中略)。こうしたテーマに係る私達のコンサルティング活動においては、左ページの図に示すフレームワークをベースとして検討を開始します(中略)。ポイントをすべて一律にカバーするのではなく、働き手の個別のニーズや価値観に応じて、各ポイントの優先順位と提供する中身をテーラーメイドしなければならないということです。

働き手への価値提供のフレームワーク

エンゲージメント(愛着心)は以下の項目に分解される

  • WORK(仕事の満足度):仕事の目的と意味、仕事への興味、面白さ、職務環境、デジタル・テクノロジーツール、自主性発揮、裁量の程度
  • PEOPLE(尊敬でき楽しく働ける仲間の存在):カルチャー、仲間意識、管理職の質、同僚・チームメンバーの質、シニア管理職の質・評判、ダイバーシティインクルージョン
  • ORGANIZATION(好ましい組織に属している感覚):組織の評判、テクノロジーの活用度、業界の展望、組織規模、ロケーション、組織の成長・安定性
  • REWARDS(賃金、福利厚生、インセンティブ、承認や表彰):トータルの賃金・給与、パフォーマンス表彰、福利厚生、ワークライフバランスなど非金銭的報酬、承認
  • OPPRTUNITY(成長・昇進の長期的機会):成長機会、将来のキャリアアップ、他社他者との差別化機会

この辺の要素が社員の会社に対するエンゲージメント意識に影響を与えている点は、肌感覚で理解できる。特に若い層ほど、仕事の目的や意味を気にするように感じている。

最初に予期したのとは異なる収穫があった。結果として大変良い読書体験になった。