Roo's Labo

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ジョン・ジェラルド・ラギー『正しいビジネス』

松田純一・湊信明『成功へと導くヒューマンライツ経営』 - Roo's Laboで言及されていたジョン・ジェラルド・ラギー氏による『正しいビジネス』を読了。

ハーバード大学政治学者であるジョン・ジェラルド・ラギー氏が、「ビジネスと人権に関する指導原則」を2011年に策定するまでのプロセス・考え方を丁寧に解説している。主義主張の異なる利害関係者である、国、人権保護団体、多国籍企業がいずれも受け入れ可能になるように、ソフトロー、多極的なフォーカスを取るといった工夫が凝らされていることがわかる。

「指導原則」の前の文書がなぜ実効性を持てなかったかという反省も含め、非常に丁寧に事態が解説しており、ビジネスと人権や「指導原則」を理解するには必須の一冊と言える。一方で、(正確性を重視したためか)日本語訳がこなれておらず、読みすすめるのに難儀した。

さて、『正しいビジネス』や『成功へと導くヒューマンライツ経営』以外に、この分野でどんな本を読み勧めたら良いものか。アマゾンで検索しても、ずばりそれらしきものがなく困っている。

多国籍企業はグローバルに創業している。政治的権力は、断片化していてそれぞれの国家の領域に固定されたままだ。国際機関は、その結果としてのガバナンス・ギャップを適切に補うことはできていない。というのは、国際機関は、一方では、市場、企業、市民社会関係者に対してグローバルな影響力を欠いており、他方で、その活動を、領域ごとに別れた国家によって厳しく制約されているからだ。したがって、問題解決のためには、国家や企業を関与させるだけではなく、市場関係者や市民社会の関心、能力、関与と、人権自体の理想が持つ本質的な力にも依拠しなければならない。「ビジネスと人権に関する国連指導原則」は、まさにそうした中で、ビジネスと人権のガバナンスギャップに取り組んでいくために、「他中心型」アプローチが持っている可能性を顕在化させる。また、国家、企業、社会的関係者が各自の政策に組み込んでいくための規範上のプラットフォームと政策ガイダンスを提供している(P.261)