ビジネスにおける人権 - Roo's Laboで気になったビジネスと人権の関係について、企業人の立場でどのように関われるか理解を深めるために読んだ。
人権(ヒューマンライツ)が経営の主要なテーマとなった経緯と現状、ヒューマンライツ経営でカバーすべき項目の射程の広さがわかりやすくまとまっている好著。また、いかにすれば企業が本腰を入れてヒューマンライツ経営に取り組むようになるか考える切っ掛けにもなった。
経緯と現状
- 『ビジネスと人権に関する指導原則』が国際連合で採択される(2011年)。ヒューマンライツの保護に関し、企業の責任が初めて明記された
- 上記を受けて各国で国の行動計画(NAP)が策定される。日本においては、いかのとおり。
「ビジネスと人権」に関する行動計画(2020ー2025)の策定について|外務省
- 国の行動計画(NAP)自体は法的拘束力を持たない。日本以外の国では、NAPの項目を具体化する形で法的拘束力を持つ国内法を整備する事例がある。例えば、カリフォルニアのサプライチェーン透明法や英国の英国現代奴隷法
上記の通り、現代においては、事業活動を行う上で、ヒューマンライツの侵害を防ぐことは、国際的な必要条件となっていると言える。
射程の広さ
日本の行動計画一つみても、そのカバーする領域の広さと複雑さに驚かされる。2(1)横断的事項としてあげられているのは以下の項目だが、非常に広範で、それぞれの分野に専門家が多く存在するほど複雑だろう。ヒューマンライツの擁護するためには、これだけ多角的な考慮事項があるということだろう。
実効性の確保(目標達成に向けいかに企業をドライブするか)
本書でも触れられているが、事業活動上で違法な人権侵害を撲滅することは、マイナスをゼロにする行為であって、それ自体は直接ビジネス上の競争力を高めるわけではない。企業の能動的な取り組みを促すためには、それ自体が競争力を高めると思わせるロジックが重要と思う。本書を読んで自分なりに感じたことをまとめると、
- 企業は、事業活動におけるヒューマンライツ擁護を徹底する。また、その活動の実態を、積極的に情報開示し、ステークホルダーと積極的な対話を行うことで透明性を担保する
- そうすることで、消費者からは理解と共感を得られ自社の製品・サービスが選ばれやすくなる。採用市場では特にESGやSDGsの取り組みを重視する若い世代に選好され、採用競争力が高まる。資本市場では、ESGに積極的な会社として認知され、相対的に資金調達の可能性が高まる。
巻末資料として、人事デュー・デリジェンスの実践的なチェックリストや参考文献表も充実している。ヒューマンライツ経営を語る上で欠かせない一冊と思う。