Roo's Labo

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アダム・マッケイ『Don't look up』(ネタバレあり)

彗星の接近による地球の滅亡を題材に現代アメリカの陥った末期的症状を鮮やかに描くブラックコメディ。

レオナルド・ディカプリオ演じる天文学者が、衝突すれば地球を滅亡に追い込むような彗星が接近していることを発見。米国大統領まで事態が報告されるも、党派で分断された大統領は目先の中間選挙にしか関心がなく、抜本的な対策はなされない。また、大統領は怪しげなIT起業家に心酔していて、科学的に確度が高いと思われる方法よりも、彼の提唱する経済的な便益をもたらすソリューションを選択してしまう。国民の世論を換気しようとTV番組に出演するも、ソーシャルメディアの興味はディカプリオたちの容姿や個人攻撃に集中し、冷静に事態に向き合おうとはしない。冷静に振り返れば、最悪の結末を回避することはできただろうにと思われる中、人類は地球最後の日を迎えるというストーリー。

党派による分断、SNSによるルッキズムやエコーチェンバー現象の結果科学的・合理的な思考とそれに基づく対応よりも自らの所属する集団が目先の利益を上げることにこだわり長期的に衰退していくという現代アメリカの抱える社会的な課題が、テンポよく描かれる。地球最後の日を迎える前に、愛する人と食卓を囲み静かに終焉を迎えようとする姿は、皮肉に満ちた本編の中でも妙に説得力があって、自分でもそうするだろうなと思わず感情移入してしまった。ブラックユーモアであっても自分たちの社会を客観視し、エンタテイメントとして世に問えるというのは、まだ希望が残っていることでもあるなと感じた。

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