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谷川浩司『藤井聡太論 将棋の未来』

天才棋士である谷川浩司氏が、自身のライバルである天才羽生善治氏と対比しつつ、若き天才棋士藤井聡太氏について語る。語り口は率直だが、暖かく、時代をつくる藤井聡太棋士へのエールに満ちていると感じた。

私は将棋の素人なので、技術的な部分はわからない。ただ、藤井聡太氏の強さの秘密は、将棋というゲームを愛し、勝つために不可欠な考えることに向き合い続けることができる点にあるのだと思った。一般に将棋棋士は記憶力に経験が加わり、20代なかばまではどんどん能力が伸びて強くなるそうで、ますます強くなる藤井さんをみられるのは楽しみだ。

その姿を見てまず私が感じたのは、藤井さんは「将棋がとてつもなく好きだ」ということだった。もちろん、将棋が好きではない棋士はいない。しかし藤井さんの場合は、その将棋好きが突出していて、それがそのまま「考えることが好き」ということに直結している。

 中盤に時間を使うことに躊躇せず、長考を避けないことについて、「わからないまま指してしまうと、結局考えた意味がなくなってしまうと思っているんです。時間がなくなってくると多少そういうのも仕方ないんですけど、なるべく考えたところで自分なりに判断の根拠を持って指したいと思っています」

 一手60秒以内に指す「一分将棋」になった時、自分が形勢不利な局面で彼はノータイムで指す。形勢不利なときは考えても仕方がない。自分が考えている間に相手にも考える時間を与えてしまうからだ。だからノータイムでどんどん指していく。そうするうちに、一度相手が悪手を指して形成が混沌としたり、自分が優勢になったりすると、一分将棋でも59秒をしっかりと使って勝ちを読み切ろうとする。このあたりはシビアな勝負師に徹していると言える。