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Nasdaq Board Diversity Rules

日経新聞で大きく取り上げられていた以下の記事。気になったので、NASDAQの取締役会多様性ルール(Board Diveristy Rule)についてメモ。

www.nikkei.com

NASDAQとは

ナスダックは、英語の「National Association of Securities Dealers Automated Quotations」の頭文字を取った略語で、全米証券業協会(NASD)により、1971年に開設された世界初の"電子株式市場"のこと。アメリカにある世界最大の新興企業(ベンチャー)向け株式市場であり、AmazonAppleGoogle(アルファベット)、マイクロソフトフェイスブックといった名だたるIT関連企業がナスダックに上場している。
(source: https://dime.jp/genre/1056666/) 

また、wikipediaによると、上場している企業の時価総額で世界第2位の証券取引所ということで、規模が大きく、影響力があるといえそう。

取締役会多様性ルール(Board Diveristy Rule)の内容

記事によると「上場企業に少なくとも1人の女性と、もう1人の人種・性的少数派の取締役を選任するよう義務」づける。一方で、NASDAQのサイトによると、ルールが求めるのは以下の通り。

Nasdaq’s Board Diversity Rule requires companies listed on our U.S. exchange to:

• Publicly disclose board-level diversity statistics using a standardized template; and

• Have or explain why they do not have at least two diverse directors.

https://listingcenter.nasdaq.com/assets/Board%20Diversity%20Disclosure%20Five%20Things.pdf

所定のテンプレートで取締役会の多様性を公表するとともに、「多様性ある取締役(diverse directors)」を少なくとも2名選任するか、選任しない場合はその理由を説明するというもの*1。よって、記事のいう「選任を義務付け」というのは少し違うのではないかと。

ここでいう多様性については、以下の記述が参考になる。

Nasdaq-listed companies that do not have at least two diverse directors, including one who self-identifies as female and one who self-identifies as either an underrepresented minority or LGBTQ+, would provide an explanation for not doing so, and their explanation could include a description of a different approach.

(source: 同じPDF)

すなわち、女性と人種的マイノリティまたはLGBTQ+のどちらかが「多様性」の要素として定義されているようだ。

所感

思う点を何点か。

  • 記事にもあるとおり、多様な取締役の選任が企業の業績向上に結びつかかは必ずしも明らかではない。そんなななかで取締役会のあり方まで企業に義務付けるのは、少し違和感がある(もっとも、説明義務を尽くすことで違うアプローチを取る権利は残っている)
  • また、複数ある属性のなかで、なぜ女性や人種的マイノリティ/LGBTQ+を優先したのか。企業業績との観点でいえば、従業員代表だったり、NGOだったり、利害関係を異にするステークホルダーを加えるほうが、企業経営上多角的な意見が出てくるのではないか。
  • 一方で、なぜこのような規制が出てきたのか背景を考えると、今までのやり方では、企業経営に資する(と思われる)多様な経験にもとづく知見を持つ(と想定される)diverse directorsが取締役会に入れない。そこを是正する目的か。取締役会で多様な知見が反映されるべきという命題に反対はしないが、このやり方がベストなのか。
  • 日本の証券取引所も早晩同種の規制が入るかもしれない。数合わせで形式的な対応をするのではなく、自社の戦略、競争環境に照らして、どんなdiverse directorsを迎え入れることが、自社のステークホルダーにとってベストなのか考えた上で対応するべきと思う。

*1:日本のコーポレート・ガバナンスコードのやり方を思わせる