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【本】伊丹敬之 人本主義

『人事の成り立ち』で紹介されていた本。日本企業の本質を人本主義にあるとする。

人本主義とは、企業(主権)の概念、シェアリングの概念、市場の概念についてそれぞれ、従業員主権、分散シェアリング、組織的市場を特徴とし、株主主権、一元的シェアリング、自由市場を特徴とするアメリカ型企業と対置される。

本書ではそれぞれの特徴について、著者から説明がなされるが、データや資料はほとんど出てこず、著者の経験と理屈をメインに論説が展開されるので、読み手によってはこれはエッセイであって、経営論ではないと思う向きがあるかもしれない。

一読した感覚は、理念、理屈としては素晴らしいし、一定の納得感がある。しかしながら、本書が世に出た以降、30年にわたり総体として日本企業の業績が低迷している事実と人本主義の関係が気になるところ。

自分自身のマクロな経験に卑近してみると、主権者たる従業員一人ひとりが個として自律した上で、その機能を発揮できれば、人本主義の理念は実現できるのかもしれないと思う。

今の勤務先を見ても、権限は分散されているが、誰が決めるのかが不明確で、徒らに時間を空費することの多さを見るにつけ、とても競争力があるとは思えない。