Roo's Labo

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Podcast『低空飛行』で聴いた隈研吾さんの話が面白かった

低空飛行とは

デザイナーの原研哉さんがホストとなり、毎回様々なゲストを招きながら、日本観光の可能性、デザイン、テクノロジー等について語る番組。

Apple Podcast内の原研哉 Kenya HARA

今回のゲストは隈研吾さん

隈研吾さんは言わずとしれた世界的な建築家。そんな隈さんが、「負ける建築」という表現で自身の建築観について語っておられた。曰く、自分より上の世代の有名建築家は、我を強く押出し、超越的・特権的な存在であった。そうした建築家のあり方は、高度成長期で社会全体がイケイケムードにあって、土木・建築業界が日本経済を中心になって支えているような状況のときは適していたが(社会が発展期にある中国では今もそういうスタイルが適している)、日本社会が成熟し、経済的には停滞するなかではそぐわない。自分のやり方で世界を支配しようとする「勝つ建築」に対し、予算や環境の成約を受けながら、その中で、与えられた条件を逆手に取って粘り強く取り組み、素材の持ち味を活かす「負ける建築」が重要になると話す。

予算も施主も、周りの環境もみんな僕らにとっては大事な相手なわけです。そのときに「予算に勝とう」と言ったって与えられた予算に勝てるわけがなくて。まあ、たまにね、勝って「5%だけアップしてくれます」ということが時々あるけれども、基本的には大きな枠は超えられない。それで負けなくてはいけない。その時に、2種類負け方が あるような気がして。その予算の悪口をずーっと言っている奴がいる。うちのスタッフなんかでも「あの施主はこれしか予算を出さないなんて全くクレイジーですね」と悪口言って、その施主のせいにする奴が一つのタイプ。もう一つは、そのない予算のなかで、それを逆手に取って面白いものにするみたいに発想を切り替えられるタイプ2がいて、建築家として伸びるのはタイプ2のほう。

所感 

引用したような、環境の中で腐らず逆にそれを逆手に取っていいものをつくるという精神が重要というのは極めて腹落ちした。また、隈さんのような売れる建築家は、(当然のように)時代の文脈を読んで、その中で自分自身・自分の作品をどう位置づけるか分析的・意識的に取り組まれている。それが、社会のニーズ・変化という文脈のなかで、自分をどう位置づけてキャリアを描くかという視点が重要だと感じた。