Roo's Labo

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トーマス・グリタ『GE帝国盛衰史 最強企業だった組織はどこで間違えたのか』

メルカリ山田社長がブログで紹介されていたので読んだ。筆者がかなりGEに辛辣というか厳しいスタンスであることを割り引いても、衰退するべくして衰退した企業と言わざるを得ない。

 

非常にざっくり内容を要約すると、

  • 事業面では、金融(GEキャピタル)と製造業の両輪がGEの特徴であった。多岐にわたる製造分野は、アメリカ国民の生活を支える企業であるというよい企業ブランドの構築に役立った。しかしながら、デジタル化、製造業のサービス化の進展やコロナによる航空機エンジン市場の凍結等急速な環境変化の中で、製造分野は徐々に競争力を失っていく。
  • そうなると、「アメリカを代表する企業」として市場から安く資金を調達し、金融ビジネスの原資にするというモデルが成り立たなくなる。焦りを深めた経営陣は、利益を生み出す装置として、金融(GEキャピタル)への依存を深める一方、製造(発電タービン事業)は将来利益の先取りを会計上行うなど実力とは異なる利益操作に走るようになる。
  • こうした傾向は、企業文化の面からも歯止めがかからないどころか悪化を加速させた。すなわち、リーダーが独裁者として君臨したり(社用のプライベートジェットが複数飛んでいたエピソードが示唆的)、偉大な企業であるGEが間違えるはずがないというプライド・無謬主義がそれだ。

人事パーソンとして、こうした事態を防ぐため何ができるだろうか。ひとつには、みたくないものであっても現実を直視する一方で、本来あるべき姿を構想し、実現のために手を打てる人材を評価する(昇進、金銭含むインセンティブ付)とともに、そうした組織文化をはぐくむ仕掛けづくりを行う必要があると思う。

GEと言えば、人事界隈ではリーダーシップ開発で名高い企業という認識だったが、その認識も改めなければいけない(複数部門を短期で異動しながらリーダーシップ育成するプログラムも、本書では会計操作のてこにされたとして批判的に扱われている)。名門企業が崩壊と言っていい状態にまで至ったかのか、組織・人事に興味がある方は手に取って損はないと思う。

なお、かつて栄華を極めた企業がいかにして衰退したかは、以下の本にもまとまっている。